今回は、実際に業務を体験するまで分かりにくいリサーチャーの業務フローについて、簡単にまとめていきたいと思います。リサーチャーの業務は調査を受注してから終了するまでのフローと大部分が一致するため、リサーチャーを志望する人はもちろん、営業などの他職種を志望する人も理解しておくことをお勧めします。
※大手中心にリサーチ業務は分業していることも多いため各業務への関与度合いは個社により異なる点ご注意ください。
次のような人にオススメ!
- リサーチャーに興味がある人
- リサーチ業界を志望している人
- リサーチ業務の理解を深めたい人
リサーチャー業務の概要
大別すると…調査の「設計」と「分析」
リサーチャーの業務は、「調査の設計」と「調査結果の分析」の大きく2つに分けられます。「調査の設計」の段階では、クライアントのマーケティング課題を分解して、どのように調査を実施するかの方針を決定します。
対して、「調査結果の分析」では、調査結果のデータを基に調査の設計段階で考えていたマーケティング課題やそれに対する仮説を検証します。各段階の詳細はこの後の章でご説明します。
また、リサーチャーになるために必要な資格はありません。
リサーチャーの業務フロー≒調査フロー
表題の通り、リサーチャーの仕事の流れは調査プロジェクトが始まってから終わるまでの流れとほとんど一致します。現在業界内で最もメジャーな「ネットリサーチ」の一般的な調査フローは以下の通りです。
- ヒアリング
- 調査仮説の検討
- 調査設計
- アンケート画面の作成・配信(実査)
- データの集計
- 分析・レポーティング
調査プロジェクトのフローを①~⑥に分けてリスト化しましたが、この中でリサーチャーが関与するのは何番でしょうか。
答えは①~⑥全てです。
最初から最後まで一人で何もかもやらなければいけないということを言いたいわけではありません。冒頭お伝えした通り、分業制の場合も多いので専門スタッフが特定の業務を行うこともあります。しかし、調査のプロジェクトマネージャーとも言われるリサーチャーは調査プロジェクトの全てを把握しておく必要があります。
調査プロジェクトへの関わり方
前段が長くなりましたが、先程確認した①~⑥のフローの中でリサーチャーはどのように関わっていくのか、各段階ごとに確認していきます。
ヒアリング
「ヒアリングは営業の仕事じゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、半分は正解で、もう半分は違います。
クライアントとの関係構築など、調査会社の主の窓口となるのは営業だからという意味では正解です。一方、リサーチャーも営業と同程度、またはそれ以上にクライアントのマーケティング課題を理解しておく必要があるという面では不正解です。
先述の通り、リサーチャーは調査の「設計」や「分析」を行います。しかし、クライアントの課題を理解できていないとこれらの方向性を定めることができません。よって、「ヒアリングは営業の仕事」という解釈はリサーチャーとしてあまり好ましくないため、ヒアリング段階のリサーチャーの関与度は高いものだと認識していただきたいです。
調査仮説の検討
次にリサーチャーは、ヒアリング内容を基にクライアントのマーケティング課題の整理や仮説の設定を行います。課題整理等はクライアントとの話し合いを通して行われることがほとんどで、ヒアリングの際に同時に行うこともあります。
例を挙げると、「お客様の販売する飲料Aが半年前から急に売れなくなった」という背景をヒアリングでお伺いした場合、マーケティング課題は「売上が不調な原因が分からない」ということになります。これを解決するための調査を実施する場合、調査目的は「不調の原因を明らかにすること」で、「飲料Aを買うのをやめ、半年前発売の競合飲料Xを買うようになったのではないか」などは調査仮説にあたります。このようにクライアントの状況からマーケティング上での課題を整理し、仮説の検討まで行うのもリサーチャーの仕事です。
この課題整理と調査仮説の検討は、調査の方針を決定するにあたって重要です。
背景▶ 飲料Aが半年前から売れなくなった。
課題▶ 売上が不調な原因が分からない。
調査目的▶ 不調の原因を明らかにする。
調査仮説▶ 飲料Aを買わず、競合飲料Xを買うようになったのでは?
→この仮説を検証しよう!
調査設計
検証したい課題が検討出来たら、次はその検証ができるように調査の内容を検討します。調査手法の検討に加え、具体的にどのような人を対象に、どのような質問を聴取すればよいのかを決定します。皆さんも一度はWebでアンケートに答えたことがあるのではないかと思いますが、そのアンケートの内容を決めるのが「調査設計」にあたります。
今回の例で言うと、「飲料Aを買わなくなり、競合飲料Xを買うようになったのでは?」という仮説を検証できるような調査を考えることです。
正解はありませんが、AとXの「購入経験有無」や「半年以内の購入頻度」等でその事実を確認し、「飲料Aの離反理由」や「競合飲料Xの購入理由」などでその原因を探ることが1つの例として考えられます。
リサーチ手法は「定量調査」と「定性調査」の大きく2つに分けられます。
「定量調査」は調査の結果を数値データで計測可能な調査のことを言います。5段階評価や「はい⇔いいえ」などの選択肢から選んでもらうことで、「○○」が選ばれた割合(%)を確認します。インターネットが普及する前は、紙で郵送して調査することも一般的でしたが、現在はWebアンケートの配信によるデータ収集が主となっています。
一方、「定性調査」はグループインタビューなど、数値では測れない「消費者の生の声」を収集するための手法です。消費者の商品に対するニーズや不満点、現状の評価等を伺い、結果は文字ベースで表されます。利用目的は様々ですが、定量調査では把握しきれない消費者の小さな声も聞きたい際に主に検討される手法です。
アンケート画面の作成と配信
調査の内容が決まったら、ここからは実際に調査実施に向けた準備に入ります。Web調査の場合、Web上で回答者に向けて表示するアンケート画面を作成します。作成は専門スタッフが行うことも多いです。
データの集計
アンケートを配信し、回収出来たら次は集計作業に入ります。アンケート結果は1や2など選ばれた選択肢番号がそのまま記録されていますが、そのままでは分析できません。
そのため、選択肢1を選んだ人は〇人、選択肢2を選んだのは〇人…など、データを集約する必要があり、その作業にあたるのが「データの集計」です。
分析・レポーティング
データの集計ができたら、その結果を基に分析を行います。分析は原則、調査実施前に検討した仮説を検証する形で行います。
先程の例で言うと、「飲料Aを買わなくなり、競合飲料Xを買うようになったのでは?」という仮説を検証するために「購入経験有無」「半年以内の購入頻度」の結果でAとXの購入状況を確認し、半年以内に飲料Aから離反した人の「離反理由」の内容を確認…という形で結果を確認します。
調査結果とそこから「飲料Aの売上が不調な理由」を分析した結果を基に、お客様へご報告するまでが「分析・レポーティング」です。また、報告内容を基に、今後お客様が取るべき方向性について直接お客様と議論することもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。リサーチ会社の業務は理解が難しい点も多いかと思いますが、リサーチャーや調査フローについて少しでも理解が深まっていれば嬉しいです!